衣食住
2007年4月20日 (金)
衣食住 とまとめていわれるが この順番はどうやってついたか?
先日いらっしゃった 呉服店のオーナー のお話は興味深かった。
・・・・・・・食、住は動物でも必要であるが、衣は人間のみが必要としている
まして 衣装はその人の社会的地位,役割を表すものとして、人間の社会では重要である
衣こそが人間を人間ならしめている重要な物である。だからはじめに衣がくるのだ・・・・
まことに説得力のある説である。
今まで私には「なぜ人間は毛皮を捨てたのだろうか?」との疑問があった。猿人たちは自前の毛皮をまとい、衣服の心配はなかったはずだ。毛皮を捨てたので 衣服が必要になったと思っていたが、その逆で、衣服を着るようになったから毛皮が不要になったのではなかったか、と思い当たった。複雑な社会生活を営むようになって、衣服が生まれ、それによって毛皮が不要となったのではないか。
みなさんは如何考えますか?
横浜関内と葛布
2007年4月 8日 (日)
今朝 大桟橋に行きましたが、途中関内を通りました。横浜関内はオフィス街です。
昔、葛布が輸出商品の花形だった頃、この横浜港から,月に何万反もの葛布が海外に輸出されました。
私の父は、この横浜に輸出商社を設け,独自に海外取引を行っていました。
その事務所の所在地が関内です。
英文で社名が書かれたドアー。タイプライターの音、油を塗った床 幼い頃の思い出があります。父は毎月横浜に出張、そのたびに、崎陽軒のシュウマイや外国のおもちゃななど買ってきてくれました。
エキゾチックな街。横浜。そんな印象でした。
その後、葛布の輸出は終をつげ、今から28年ぐらい前に事務所をたたみました葛布の歴史の1ページです。いまこうして 横浜に来ていると 感慨深い思いがします。
整
経3 筬通し
2007/4/24
いよいよ 整経がすすんできました。綜こうに糸を通し終わったら次は筬通しです。
筬とは 櫛のようなところに経糸を通し、緯糸を打ち込む道具です。布の巾を出すためと,緯を打ち込む二つの役割があります。 この機は葛布専用の機です。筬の羽は竹を削ってできています。とても貴重な物です。
竹筬は7、8年前最後の作り手が亡くなったため、日本では作れなくなりました。インドネシアや東南アジアにも竹筬はありますが、目が粗く、作りも雑で,日本の織物には適しません。そこで竹筬研究会ができ、復元を目指していますが、まだ満足いく結果がでていないといいます。うちの工房でも新しい筬はステンレスですが、やはり柔らかさでは
竹筬にはかないません。技術は一度失われると復元することが難しいものなのですね。
さて、わたしの筬通し。最近、老眼がすすんで うまく見えなくなり、同じ羽に何本もいれてしまったり、失敗ばかり。織りも引退かな と思ったとき、古老から、「目を使っているうちは半人前、指の感覚を使うのだ!」といわれ
開眼(いや眼は良くなっていない)。 指先を使うようになって かえって正確に、より早く筬通しができるようになりました
今回は1cmに20本の糸をとおしますので、比較楽でした。
整経 その2
2007/3/22
昨日に続いて 整経の話。
今日経巻き(たてまき)が終了しました。経巻きとは 織り機の後ろにある糸巻き(男巻きという)に糸を巻き取る作業です。680本の糸を整列させ ゆっくり巻き取ります。当工房では経巻きはひとりで行うことになっています。
夫婦でやると 息が合い過ぎ、糸たちが嫉妬し、うまく行かないのです。(うまくごまかした・・・)
しかし 本当に糸は嫉妬深く、ほかのこと考えながら 糸繰りをしていると 必ず失敗します。これはホント。
さて、糸を巻きながら機草をいれていきます。現代ではそれは厚い紙ですが,昔は本当に草を入れた。
藁や乾燥した草を入れたそうです。
経が巻けたら,次は綜こうと通し。680本の糸を 二枚の綜こう枠に並んだワイヤー綜こうの小さな穴に前後交互に
入れていきます。間違わないように慎重に入れていきます。
と いうことで 今日は綜こう通しの画像をのせます。
ワイヤーの真ん中に小さく開いている穴に糸を通していきます。順番を間違えると大変!
経世済民と整経
2007/3/22
このところ 織物の神様が降りてきて、織物の仕事ばかりやってます。特に整経。「整形」ではありません!
整経とは 布の経糸(たていと)を整えること。そう、縦糸は経というのです。
だから、「経済」という言葉は 経世済民からできませたが、世の中の縦糸、つまり秩序をただして 民を救う意味であります。 福沢諭吉が「経世済民」から「経済」という言葉をつくったのは有名な話です。
■経済
経済という単語は世の中を治め、人民を救うことを意味する経世済民(若しくは経国済民)の略である。最も古い例は東晋の葛洪によって記された『抱朴子』(ほうぼくし)に遡るとされる。(Wikiより引用)
そう、世の中の仕事は 天の秩序を守って、人のためになること 。それが大事だと思います。
先日 やった整経は春蚕の座繰 90中 で帯地用
今日行っているのは 赤城の座繰糸 170中 いずれも 撚絲していません。
手の中で ぷるぷる震えているようで、とても可愛く透明感がきれいな 絹糸たちです。
絹って繊細なイメージがありましたが この子たちはとても力強い感じです。
整経画像後から挿入しました。ご覧ください
い〜と〜巻きまき 制作1
2007/3/16
い〜と〜巻きまき い〜と〜巻きまき ひーてひーて引っ張って♪
葛布屋のおじさん,上手に葛布を作ります♪、
てな訳で整経準備をしている私です。座繰りの絹糸を経にして、帯を作ります。制作過程を徐々に公開。
プレゼンテーション
2007/3/4
講演依頼が2件、説明会が2回あります。そこでパワーポイントというソフトでプレゼンテーションを作りました。
一日かかったのです。おかげで一歩も自宅から出ていない日になりました。
プロジェクターではスライド 自分のパソコンでは スライドにその説明、次のスライドなど裏方のツールが使えて便利です。さて、時間とおりにできますか?
プレゼンに使った葛洗いの素敵な写真掲載します
きれいな写真でしょう? 数年前の大井川での葛洗いの場面です。洗っていると足下に魚たちが寄ってきます。葛の皮を食べにくるのです。のどかです。
葛の種
2007/3/3
犬を連れて大井川に散歩に連れて行ったのですが
河原一面に葛の鞘が大量に散らばっていました。
葛の鞘は茶がかった緑で毛で覆われています。中を見ると葛の種がやはり毛に覆われて並んでいます。
茶色の種が入っている鞘、黒い種が入っている鞘があります。黒い種はすぐに発芽せず、数年から数十年後に発芽するとか。とにかくおびただしい量の葛の種にはびっくりさせられます。これが一斉に芽をふいたらすごいことになるでしょう。葛の生命力の強さを感じさせられました。
芭蕉布の発酵
2007/2/16
かねてより 植物繊維から糸を取り出す過程で、「発酵」の役割を考えていました。
1.物理的方法 昭和村や宮古島の苧麻から繊維を取り出すとき、熱を加えず、金具や貝殻で取り出します。
このことを物理的方法と私が名付けました。
2.化学的方法 芭蕉布や藤布を作る際、灰汁汁で煮ます。これはアルカリで繊維を取り出す方法なので
化学的方法と名付けました。シナ布などもこの方法です。
3.生物的方法 発酵菌の作用を借りて繊維を作る方法 これを生物的方法と名付けました。静岡遠州の葛布は
これを積極的に行っています。
生物的方法は繊維を傷つけにくく、美しい繊維がとれるのですが、いつのまにか無くなってしまったと私は考えます。ほかの繊維でも行っていたのですが、能率の問題などから忘れ去られたのではないかとかねてより推論していました。 きっとほかの繊維でも発酵技術があったはずだと考えたのです。
大麻は水の中で微発酵させます。 亜麻の良い物は草の上で発酵。次のレベルは水の中で発酵させると聞いています。現在は主に機械に掛けて繊維を剥がす、物理的方法が大多数です。徳島木頭村で昔作っていた太布は発酵を用いていたとか。現在は灰汁汁炊きです。
今回、芭蕉布を作っている奄美の方に 奄美大島の芭蕉繊維を作るには発酵過程を用いると聞きました。
沖縄とやり方が違います。これは発見です。
どうも、昔は発酵技術があったのではないかとの私の推論。少しずつ証明されてきたようです。
かなり専門的な話になってしまいました